<携帯電話販売>覆面調査で分かった消費者軽視
2117/6/25(日)
6月22日に開かれた総務省のICT安心・安全研究会定期会合で、衝撃的な結果が公表されました。総務省が携帯電話販売ショップで覆面調査(299サンプル)をした結果、法定事項の説明が不十分だった店が多数あったというのです。総務省は携帯大手3社に行政指導をする方針です。野村総研上席コンサルタントで、情報通信政策に詳しい北俊一さんがリポートします。【毎日新聞掲載プレミア】
内訳は、料金プランについて期間拘束・自動更新付き以外の選択肢の紹介が全くなかった(68%)▽期間拘束・自動更新の仕組みが適切に説明されなかった(66%)▽解約時の費用について、個別の解約費用の十分な説明がなかった(51%)▽確認措置が適切に説明されなかった(79%)▽データ通信容量の上限を超えた場合の制限について、説明がなかった(46%)──などだった。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク3社間でも、大手3社のショップと量販店の間でも、数値に大きな差は見られなかった。
この2年間、携帯電話業界の販売適正化に奔走してきた関係者にとって、衝撃的な内容である。とりわけ一般消費者には耳慣れない「確認措置」が十分説明されなかった。
クーリングオフの代わりに導入された「確認措置」
確認措置とは、携帯電話の契約後8日以内に、(1)自宅で使っていて電波の入りが悪い(2)十分な説明を受けなかった(3)必要な書類をもらわなかった──という理由があれば、端末を含めて契約を解消・返却することができる、というものだ。
消費者からの苦情相談件数が一向に減らない携帯電話販売に対しては2年前、特に理由を必要としない「クーリングオフ」を適用すべきだという議論があった。
しかし、「法令に基づく説明を業界を挙げてしっかり行う」という条件を付け、いわば“執行猶予”付きで、確認措置という中間的な仕組みを導入した経緯がある。“執行猶予中”なのに、今回の結果が出たことを携帯電話業界は真剣に受け止めなければならない。
説明したつもりのショップと理解できなかった利用者
とはいえ、そこを差し引いたとしても、十分な説明がなされなかったという結果は覆らないだろう。覆面調査の直後に行われた利用者のウェブ調査で、似たり寄ったりの結果が出たことでも裏付けられる。
携帯電話販売代理店の業界団体である「全国携帯電話販売代理店協会」(全携協)からは、「この結果には違和感を抱かざるを得ない」という趣旨の発言があった。ショップスタッフはちゃんと説明しているはずだ、というのだ。
このギャップは、ショップスタッフとしてはちゃんと説明したつもりでも、たくさんの小難しい事柄を一気に早口で説明されれば、利用者の記憶には残らない、ということに起因していると考えられる。利用者がたとえ書類に署名したとしても、内容を理解したとは限らないのだ。
今回の調査結果を受けて、総務省は大手事業者3社を行政指導する方針だ。3社がショップスタッフに対して、これまで以上にしっかりと丁寧に説明するように、と指導することになる。
ショップ覆面調査は今後も実施予定
この問題を解決するために、ショップ応対時の業務フローを抜本的に変える必要が出てくるだろう。対面説明の際、必ず説明しなければならない重要事項をタブレット画面にしっかり盛り込み、重要事項を分かりやすく、かみ砕いて解説するアニメーションや動画を作り、待ち時間にタブレットで見てもらう、などの方法も有効だろう。
同時に、契約に関する十分な知識を持ち、ショップスタッフからの口頭説明は不要であることを承諾した利用者に対しては、電波の入りが悪いことを除き、8日以内の契約解除には応じない、といったルールを作り、説明時間を短縮する取り組みも不可欠になるだろう。
総務省は販売ショップへの覆面調査を本年度下期にも行う予定だ。誰もが納得する調査を実施することで、今後業界を挙げたルール作りと全ショップへの徹底が進んでほしい。1年後には、驚くほど改善された調査結果が報告され、誰からも信頼される携帯電話業界に生まれ変わっていることを祈る。
記事引用:毎日新聞
筆者主観
クーリングオフが適用されてないなんて、きっと誰もが気づいていないと思う。
その代わりに「法令に基づく説明を業界を挙げてしっかり行う」という条件を付け、いわば“執行猶予”付きで、確認措置という中間的な仕組み」だったなんて。しかも業界用語や機種依存の用語の連発で説明の意味が理解できないまま、どんどん説明が進んでいく。
この状況が何故起こるのか、おそらく販売店への説明でその手数料をもらっていると思われる、販売店の手数料が、値下げ競争のおかげでどんどん下がってきているからかもしれません。
そうなると、せっかく通信会社を変えて、携帯を買って、機種まで購入したお客さんへの対応がこれなので、年寄りなどのスマホの操作に不慣れな人の質問なんて、どうなることやらです。母体が金をけちったら、サービスにモロに影響するというのに、そんかことを軽視する通信会社の怠慢ぶりには、消費者からもどんどん声を上げるべきなのかもしれない。